資産形成

小規模企業共済は本当に得か|16年9か月で2000万円受取の実額公開

2026年5月15日

※本記事には広告・プロモーションを含む場合があります。

掛金額・受給要件・制度改正の内容は、中小企業基盤整備機構(中小機構)および国税庁・厚生労働省の公開情報をもとにしています(2026年9月時点)。
実額部分は、私自身の加入実績です。

こんにちは、軽貨物ノートのケンです。

50代・近畿圏在住の現役軽貨物ドライバーで、スズキ エブリイ(走行11万km)に乗って企業向けの定期ルート配送をしています。

この記事は「個人事業主に退職金はない」という現実に向き合う話です。

会社員なら勤続20年で数百万円から千万円単位の退職金が出るところを、個人事業主やフリーランスは自分で用意しなければいけません。
その事実に気づくのは、たいてい40代を過ぎてからだと思います。

私は北海道でフランチャイズの飲食店を20年経営していました。
その途中から小規模企業共済に加入し、妻も共同経営者として加入。
夫婦2契約で201か月(16年9か月)納め、2024年2月に事業を廃止したときに共済金を受け取っています。

結論を先に書きます。
小規模企業共済は、個人事業主が最初に検討すべき制度だと私は考えています。
そして、よく見かける「20年未満は元本割れするから入るな」という警告は、条件を限定しないと間違いです。

ネット上には小規模企業共済の解説記事が山ほどあります。
ただ、そのほとんどが制度紹介で終わっていて、実際に受け取った人が書いたものはほとんど見当たりません
正直に言うと、私が加入を検討していた当時も、知りたかった情報はどこにもありませんでした。

ですのでこの記事では、まず私が実際に受け取った金額と受取区分を先に公開することから始めます。
掛けている途中の人ではなく、出口を通った人間の話です。
そこが一番知りたいところだと思うからです。

この記事でわかること

  • ケンが夫婦2契約・201か月納めて廃業時に受け取った実額と受取区分
  • 「20年未満は元本割れ」が当てはまる場合と、当てはまらない場合の決定的な違い
  • 会社員との兼業では加入できないという、見落とされやすい加入資格の壁
  • 掛金の決め方と、軽貨物の固定費から逆算する考え方
  • 妻を共同経営者として加入させ、控除枠を2倍にした実際の手順
  • 掛金は所得税・住民税を下げるが、国民健康保険料は下げないという構造
  • 共済金A・共済金B・準共済金・解約手当金の4区分と出口戦略
  • 2026年・2027年の制度改正(退職所得控除の10年ルール、iDeCo上限7.5万円)

この記事は制度の考え方を整理したもので、特定の金融商品を勧誘するものではありません。
税額や受給要件は個々の事情で変わるため、実行前に必ず税理士および中小機構の共済相談室にご確認ください

※軽貨物として開業する流れ全体をまだ把握していない方は、先に軽貨物の始め方完全ガイドをご覧ください。


【実額公開】夫婦で201か月納めて、廃業時に約2,000万円を受け取った

お金の画像

まずは私の加入記録と、受け取った金額です。

加入から廃業までの記録

私が小規模企業共済に加入していたのは2007年6月から2024年2月まで、掛金納付月数は201か月(16年9か月)です。

最初は私ひとりで加入しました。
掛金は上限額ではなく、低めの金額からのスタートです。
その後、途中から妻も共同経営者として加入し、店の売上が伸びるのに合わせて何度か増額を重ねました。
最終的には夫婦それぞれが上限の月7万円、合計で月14万円を納めていました。

加入期間 2007年6月〜2024年2月(納付月数201か月/16年9か月)
契約数 2契約(私=個人事業主、妻=共同経営者)
掛金の推移 私が単独で低額から加入 → 途中から妻も加入 → 段階的に増額
掛金(最終) 月70,000円 × 2人 = 140,000円
受取事由 個人事業の廃止(妻は廃業に伴う共同経営者の退任)
受取区分 共済金A(2契約とも)
受取額 約2,000万円(夫婦2契約の合計)
当時の業種 飲食業(家族とパート中心の規模/サービス業=従業員5人以下の枠)

掛金の累計額や年別の推移については、当時の資料が手元に残っていません。
記憶で書くと不正確になるため、ここでは金額を伏せています。
確定申告書の控えで確認できた時点で追記します。

受け取ったのは「解約手当金」ではなく共済金A

ここが記事の核心です。

小規模企業共済の受取には4つの区分があり、どの区分に該当するかで計算式そのものが変わります
私が該当したのは、廃業事由による共済金Aでした。

よく見かける「20年(240か月)未満は元本割れ」という警告は、自分の意思でやめる「任意解約」の場合の話です。
任意解約では納付月数に応じた支給率が適用され、240か月でようやく100%に達します。
だから20年未満だと掛金合計を下回ります。

一方、廃業や死亡による共済金Aには、この支給率による減額がありません
中小機構が公開している例(掛金月額1万円)では、納付5年で掛金合計60万円に対して62万1,400円。
つまり5年という短期でも掛金合計を上回る設計になっています。

私は201か月納付なので20年に届いていません。
それでも掛金合計を超える金額を受け取れたのは、任意解約ではなく廃業だったからです。
この違いを知らないまま「20年続けられる自信がないから入らない」と判断するのは、率直にもったいないと思います。

受取区分の詳細は「受け取り方で金額が変わる4パターン」で解説します。
加入前にここだけは理解しておくと、判断がまったく変わります。

20年の契約が一枚の紙で終わった日に、残っていたもの

ケンの体験談

フランチャイズ本部からは、ずっと「20年やれば再契約できる」と言われていました。
だから20年目を目標に走ってきたつもりでした。

ところが20年目に告げられたのは、「大家が再契約しないと言っている」という一言でした。
結果として強制退去です。
20年積み上げた店が、契約書一枚で終わりました。

あのとき痛感したのは、ひとつの店、ひとつの収入源に20年すべてを賭けることのリスクです。
売上は毎月しっかりあったのに、店を失った瞬間に収入はゼロになりました。

そして手元を見直したときに、明確に「積み上がっていた」と言えるものが、この共済金でした。
日々の売上は、生活費と店への再投資に消えていきます。
強制的に事業の外へ出しておく仕組みがなければ、退職金にあたるお金は一円も残っていなかったはずです。

正直に言うと、掛けている16年間は「毎月14万円は重い」と感じていました。
その評価が完全に逆転したのは、店を失った日でした。

この経験が、いまの私の働き方の原点になっています。
軽貨物・ネットビジネス・株式投資という3本の柱を並行して育てているのは、収入源が一本だけの状態がどれだけ脆いかを、身をもって知ったからです。

小規模企業共済も、この文脈で見ると意味が変わります。
これは節税商品というより、事業が終わったときに次の柱を育てる原資です。
実際に私は、この共済金があったから北海道から近畿圏へ移住し、軽貨物で再スタートを切ることができました。


小規模企業共済とは|国が用意した個人事業主の退職金制度

小規模共済の資料

ここからは制度の基礎です。
すでにご存じの方は、加入資格のセクションへ進んでください。

在籍172万人・運用資産11.9兆円という規模

小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する、小規模企業の経営者・個人事業主のための国の退職金制度です。
小規模企業共済法という法律に基づいて運営されており、民間の保険商品や投資商品とは性格が違います。

2026年9月時点で在籍者数は約172万人、共済資産の運用残高は約11.9兆円という規模です。
令和6年度(2025年3月まで)の支給実績では、平均加入年数が約18年、平均支給額が約1,144万円となっています。

私の加入年数16年9か月は、ちょうど平均に近い水準でした。
つまり2,000万円という金額は、夫婦2契約だったから到達できた数字であって、1契約なら平均並みの結果です。
ここは正直に書いておきます。

掛金は月1,000円から7万円、全額が所得控除

掛金は月1,000円から70,000円まで、500円単位で自由に設定できます。
加入後の増額・減額も可能なので、無理のない金額から始めて事業の成長に合わせて上げていけます。

そして最大の特徴が、掛金の全額が所得控除の対象になることです。
生命保険料控除のように上限額で打ち切られることがなく、支払った全額が「小規模企業共済等掛金控除」として課税所得から差し引かれます。
年84万円をまるごと控除できる制度は、他にほとんどありません

予定利率1.0%と付加共済金

共済金は「基本共済金」と「付加共済金」の合計で決まります。
基本共済金は予定利率年1.0%で計算され、掛金月額と納付月数に応じて金額が確定しています。
付加共済金は運用収入の状況に応じた上乗せ分で、支給率は経済産業大臣が毎年度定めるため年度によって変動します。

受け取り方は一括・分割・併用から選べます。
一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得として扱われ、どちらも事業所得より税負担の軽い区分です。

差押えが禁止されているという意味

意外と知られていませんが、共済金を受け取る権利は小規模企業共済法第15条により、譲渡・担保提供・差押えが禁止されています。
破産手続や民事再生手続でも保護される資産です。

事業が行き詰まったときにも守られるという性格は、この制度の重要な部分だと思います。
ただし国税・地方税の滞納処分など一部例外があるため、「絶対に守られる」と言い切るのは正確ではありません。
この点は後半の注意点セクションで整理します。


軽貨物ドライバーの加入資格|会社員との兼業では入れない

加入資格と必要書類

節税効果の大きさばかりが語られる制度ですが、実は加入資格の判定でつまずく人がかなり多いと感じます。
ここを先に確認しないと、話が前に進みません。

業種別の従業員数要件

小規模企業共済は「小規模」な事業者のための制度なので、常時使用する従業員の数に上限があります。

事業の種類 常時使用する従業員数
建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業など 20人以下
商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) 5人以下
宿泊業、娯楽業 20人以下
士業法人(弁護士・税理士など)の社員 5人以下

軽貨物運送は運輸業にあたるため、従業員20人以下の枠です。
ひとりで走っているドライバーは当然該当します。

なお、ここでいう従業員に家族従業員(青色事業専従者)や共同経営者、パート・アルバイトは含まれません
カウントされるのは常時雇用している従業員です。

飲食業は「5人以下」という別の壁だった

私が加入していた当時の飲食店は、サービス業=従業員5人以下の枠でした。
運輸業の20人以下と比べると、かなり厳しい基準です。

当時の店は家族とパートさん中心の規模で運営していました。
パートは常時使用する従業員に含まれないため、この5人以下という枠にきちんと収まっていたわけです。

逆に言えば、飲食や小売で正社員を数名雇っている段階に入ると、この制度の入口が閉まります。
規模を広げる前に加入しておく意味は、ここにもあります。

副業ドライバーが加入できない理由

これが最大の落とし穴です。

会社に常時雇用されている給与所得者は、副業で個人事業を営んでいても原則として加入できません。

「副業で開業届を出して事業所得があるなら入れるはず」と考える方が多いのですが、中小機構の見解では給与所得者は加入対象外とされています。
判断のポイントは、その個人事業がその人の主たる事業といえるかという点です。
会社勤めが本業で、副業として個人事業をしている状態では要件を満たしません。

軽貨物の文脈でいえば、会社員として働きながら休日だけ配送している段階では加入できないということです。

注意:兼業の判定は個々の実態で変わります。
微妙なケースは、加入手続きの前に中小機構の共済相談室に確認してください。
加入資格がないまま契約すると、後に契約が無効となり、掛金は返還されるものの所得控除が否認される可能性があります

専業になった日が加入のスタートライン

つまり、会社を退職して専業の個人事業主になったタイミングが、加入のスタートラインです。
脱サラで軽貨物を始める方は、ここを開業時の資金計画に組み込んでおいてください。

専業の軽貨物ドライバーであれば問題なく加入できます。
黒ナンバーで業務委託として配送している方は、まさに制度が想定している対象です。

ちなみに私の場合、飲食店時代の契約は廃業により終了していますが、いま個人事業主として軽貨物をしているので再加入は可能な立場です。
過去に共済金を受け取っていても、新たに資格を満たせば入り直せます。
ただし納付月数はゼロからのカウントになります。
50代半ばからの再加入をどう判断しているかは、記事の最後に書きます。


掛金はいくらに設定すべきか|軽貨物の固定費から逆算する

掛け金をいくらにするか

加入資格を満たしていると分かったら、次は掛金額です。

節税効果を最大化するなら上限の月7万円まで入れたいところですが、私は最初から上限にはしませんでした
ここは実際に16年掛けてみて、正しい判断だったと確信している部分です。

上限7万円から始めない理由

掛金は月1,000円から70,000円まで、500円単位で設定できます。
つまり月1,000円からでも始められる制度です。

私が段階的にしか上げなかったのは、先に固定費の実額を把握してからでないと、掛金が「払えない金額」になると分かっていたからです。

飲食店には家賃、人件費、食材の仕入れ、水道光熱費がありました。
軽貨物なら、任意保険料、燃料代、車両の維持費、駐車場代がこれに当たります。
どちらも共通しているのは、売上がゼロの月でも出ていくということです。

ここで大事なのは、掛金の性格を正確に理解することです。
掛金は減額しても不利益は生じませんが、途中で任意解約すると明確に損をします
だからこそ、低めに始めて増やしていくのが定石になります。

ケンの体験談

いま軽貨物をしている立場で言うと、掛金を決める前に必ず見ておくべき数字があります。
それは任意保険料です。

私は損保ジャパンで3年契約を結んでいて、年間13〜14万円台を払っています。
月に換算すると1万円強。
これは選べる支出ではなく、黒ナンバーで走る以上どうしても出ていく固定費です。

開業直後の方が「節税になるから」と共済の掛金を月7万円に設定すると、保険料や車両費と重なった月に一気に苦しくなります。
正直に言うと、資金繰りが詰まったときに人は冷静な判断ができません。
私が飲食店で経験した一番きつい局面も、売上より先に固定費のスケジュールが来る月でした。

掛金は後から増やせます。
最初の数か月は実際の手残りを見て、それから決めるのが現実的だと思います。

増額・減額の手続きと「240か月」の落とし穴

掛金の増額・減額は、いつでも申し込めます。
かつては減額に「事業経営の著しい悪化」などの理由が必要でしたが、制度改正により現在は理由を問わず減額できます
回数の制限もありません。

手続きは「掛金月額変更申込書」を委託団体または中小機構に提出する方法と、小規模企業共済オンライン手続きポータルからの申請が使えます。
オンラインなら書類の郵送が不要なので、実務上はこちらが早いです。

ここが落とし穴です。

増額・減額をした場合、任意解約時の支給率を判定する240か月のカウントは、増額・減額した部分ごとに別々に積み上がります

たとえば加入10年目に3万円から7万円へ増額した場合、増額した4万円分の納付月数は10年目からのカウントです。
任意解約するとその部分だけ支給率が低くなります。

私も後半に何度も増額しているので、もし任意解約を選んでいたらこの影響を受けていました。
廃業による共済金Aでは支給率の減額そのものがないため、結果的に影響を受けずに済みました。

掛止めより減額を選ぶべき理由

「支払いがきつい月は止められる」と誤解されがちですが、掛止め(納付の一時停止)は原則として認められていません

認められるのは、所得がない場合、災害に遭った場合、入院した場合などの限定的なケースです。
「納付掛止届出書」の提出が必要で、期間も6か月または12か月といった上限があります。

そして重要なのが、掛止めした期間は納付月数にカウントされないという点です。
老齢給付の要件である180か月にも算入されず、その期間は所得控除も受けられません。

ですので、資金繰りが厳しくなったときは掛止めより減額を選ぶほうが実務的です。
月1,000円まで下げれば負担はほぼ消えますし、それでも納付月数は積み上がり続けます。

対応 納付月数 所得控除 使うべき場面
減額(最低1,000円) 積み上がる 減額後の額で受けられる 資金繰りが厳しいとき。第一選択
掛止め カウントされない 受けられない 所得なし・災害・入院など限定的な事情
任意解約 最後の手段。20年未満は元本割れ

前納で年末の利益を調整する

掛金は前納できます。
前納すると前納減額金という割戻しが受けられ、前納月数が長いほど金額は大きくなります。

ただし実務上、割戻しより効果が大きいのは税務面です。
その年に支払った掛金は、前納分も含めて全額がその年の所得控除の対象になります。
つまり12月に翌年1年分(最大84万円)を前納すれば、その年の控除額を一気に増やせます。

軽貨物は年末に近づくにつれて配送量が増える業種なので、想定より利益が出た年の調整手段として使えます。
覚えておくと便利な機能です。

前納で控除を前倒しした年の翌年は、その分の控除が減ります。
毎年繰り返せば平準化されますが、初回だけの一時的な効果と考えておくのが無難です。


節税効果の実際|所得税・住民税は下がるが国保料は下がらない

節税効果の実際

ここは小規模企業共済で最も誤解が多い部分です。
「節税になる」という言葉が曖昧に使われているため、期待とズレが生じやすいところです。

課税所得500万円なら年約25万円の節税

掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として、支払った全額が課税所得から差し引かれます。
したがって節税額は、おおまかに年間掛金 ×(所得税率+住民税率10%)で見積もれます。

課税所得 税率合計(所得税+住民税) 掛金月3万円
(年36万円)
掛金月7万円
(年84万円)
200万円 15% 約5.4万円 約12.6万円
300万円 20% 約7.2万円 約16.8万円
500万円 30% 約10.8万円 約25.2万円
700万円 33% 約11.9万円 約27.7万円

課税所得500万円の個人事業主が掛金月7万円を納めれば、年約25万円の税負担が消えます
年84万円を積み立てながら25万円が戻ってくるわけで、これは実質的に手取りを減らさずに貯蓄しているのに近い状態です。

注意:上の表は簡便な概算です。
控除によって所得税の税率区分が下がる場合は、一部が低い税率で計算されるため単純な掛け算より節税額は小さくなります。
正確な金額は中小機構の加入シミュレーションを使うか、税理士にご確認ください。

国保料に効かないのは自治体差ではなく構造

ここは断定して書きます。
小規模企業共済の掛金は、国民健康保険料を下げません。

理由は算定の仕組みにあります。
国保料の所得割は「旧ただし書き所得」(総所得金額等から基礎控除相当額を差し引いた額)で計算されます。
この算定には、小規模企業共済等掛金控除や社会保険料控除といった所得控除が、構造上そもそも含まれません

つまり「自治体によって扱いが違う」という話ではなく、制度としてそうなっています。
掛金を月7万円払っても、国保料の通知書の金額は一円も変わりません。

小規模企業共済は所得税・住民税に効き、国保料には効かない制度です。
国保料そのものを軽くしたいなら、青色申告特別控除や経費の適正な計上といった別の打ち手が必要になります。

ケンの体験談

飲食店の売上が大きかった時期、私は国民健康保険料を毎年最高額(賦課限度額)で払い続けていました。

当時、共済の掛金は夫婦で月14万円。
所得税と住民税はしっかり軽くなっていました。
それでも国保の通知書は毎年同じ最高額で届きます。

正直に言うと、当時の私は「これだけ控除しているのに国保は変わらないのか」と首をかしげていました。
仕組みを理解したのは、だいぶ後になってからです。

軽貨物に転身してからは収入規模が変わり、国保料は相対的にかなり下がりました。
とはいえ月3万円前後は決して軽い負担ではありません。
共済と国保は別の話だと切り分けて考えるようになったのは、この経験からです。

確定申告での記入と払込証明書

加入すると、毎年11月頃に中小機構から掛金払込証明書が郵送されます。
これが控除を受けるための書類なので、必ず保管してください。

確定申告書では「小規模企業共済等掛金控除」の欄に記入します。
社会保険料控除の欄とは別枠なので、国民健康保険料や国民年金保険料と混ぜないよう注意が必要です。

支出 申告上の扱い 記入欄
小規模企業共済の掛金 所得控除 小規模企業共済等掛金控除
iDeCoの掛金 所得控除 小規模企業共済等掛金控除(同じ欄)
国民健康保険料 所得控除 社会保険料控除
国民年金保険料 所得控除 社会保険料控除
経営セーフティ共済の掛金 必要経費 決算書(所得控除ではない)
アイキャッチ
軽貨物ドライバーが確定申告までに準備すること完全ガイド

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妻を共同経営者として加入させた話|控除枠が2倍になる

 

妻を共同経営者として加入

小規模企業共済は、個人事業主本人だけでなく共同経営者も加入できます
私は最初ひとりで加入していましたが、途中から妻もこの枠を使って加入しました。

結果として、掛金の所得控除枠は年84万円から168万円に倍増し、廃業時には夫婦2契約分の共済金を受け取ることになりました。

この共同経営者枠は、意外と知られていないと感じます。
「配偶者は入れない」と思い込んでいる方もいますが、要件を満たせば個人事業主1人につき2人まで加入させられます。

共同経営者として認められる2つの要件

中小機構が示している共同経営者の要件は、大きく2点です。

ひとつは、事業の経営に必要な重要な判断に関与し、または事業に必要な資金を提供していること
具体的には、事業資金を負担している、事業に必要な設備や機械を提供している、重要な業務執行の決定に関与している、といった実態が求められます。

もうひとつは、事業の執行に対して報酬を受けていることです。
青色事業専従者給与を受け取っている配偶者は、この報酬要件を満たします。

つまり「名前だけ共同経営者」では認められません。
逆に、日々の業務を分担して帳簿上も専従者給与などの形で報酬が出ているなら、実態としての要件はすでに満たしていることが多いと思います。

加入時に必要になった書類

手続きでは、共同経営者であることを客観的に示す資料が必要になります。

一般的には、共同経営契約書などの写し(事業に関する取り決めを記した書面)と、報酬の支払いが確認できる書類(青色申告決算書の専従者給与の記載、確定申告書の控えなど)です。

認められる資料の種類や様式は個々の事情で変わります。
ですので加入前に中小機構の共済相談室か、委託団体(商工会・商工会議所、金融機関など)に確認するのが確実です。
窓口で「共同経営者として配偶者を加入させたい」と伝えれば、必要書類を案内してもらえます。

私の実感としては、ここで面倒がって手続きを後回しにするのが一番もったいないパターンです。
共同経営者としての加入が1年遅れれば、その年の控除枠(最大84万円)と将来の共済金の積み上がりが、まるごと1年分消えます。
書類を一度そろえるだけの手間で、その後何年分もの結果が変わります。

退職所得控除を2人分使えるという意味

共同経営者枠の効果は、掛けている間の控除だけではありません。
受け取るときにも効きます

共済金を一括で受け取ると退職所得として扱われ、退職所得控除(納付月数20年以下は40万円×年数)を差し引いた残りの半分にしか課税されません。
私も一括で受け取ったので、この区分でした。

ここで見落とされやすいのが、この控除は契約者ごとに使えるという点です。
納付月数17年(勤続年数17年として扱われます)なら、退職所得控除は1人あたり40万円×17年=680万円
2契約なら合計1,360万円分の控除枠になります。

同じ2,000万円を受け取る場合で比較すると、次のようになります。

受取パターン 課税退職所得 税負担(概算)
1契約で2,000万円 (2,000万−680万)÷2=660万円 約157万円
2契約で1,000万円ずつ (1,000万−680万)÷2=160万円 ×2人 約48万円(2人合計)

差は約110万円です。
受け取る総額は同じでも、契約が1本か2本かでこれだけ変わります。

事業を配偶者と一緒に営んでいて加入資格を満たせるなら、早い段階で2契約にしておく意味はここにあります。

注意:上記は退職所得控除以外の要素を考慮しない概算です。
同じ年に他の退職金がある場合や、iDeCoの一時金を先に受け取っている場合は結果が変わります(iDeCoのセクションで解説します)。
実際の受取前に必ず税理士にご確認ください。

共同経営者の出口は本人と違う

ここは加入前に必ず理解しておくべき点です。

共同経営者の場合、個人事業主の廃業に伴って退任したときは「共済金A」となり、納付月数による支給率の減額を受けません。
私の妻もこれに該当しました。
だから夫婦2契約とも、201か月という20年未満の納付月数でありながら減額を受けずに受け取れています。

一方で、事業は続いているのに共同経営者だけが自分の意思で退任した場合は「解約手当金」です。
この場合は20年未満なら掛金合計を下回ります。
また、個人事業主の配偶者や子へ事業を譲渡したことに伴う退任は「準共済金」の扱いになります。

やめる事情 個人事業主本人 共同経営者
事業を廃止した 共済金A 共済金A(廃業に伴う退任)
配偶者・子へ事業を譲渡 準共済金 準共済金
自分の意思でやめた
(事業は継続)
解約手当金 解約手当金
65歳以上+180か月 共済金B(老齢給付) 共済金B(老齢給付)

同じ「やめる」でも、事業本体がどうなったかで区分が変わる仕組みです。
共同経営者が抜けるタイミングは、事業主本人の出口と一緒に設計する必要があります。

受給事由の判定は個別の事情で変わるため、廃業や事業承継を検討する段階で、必ず中小機構と税理士の双方に確認してください。


受け取り方で金額が変わる4パターン

 

受け取り方

小規模企業共済は「いつ・どんな理由でやめるか」で、受取額の計算式そのものが変わります。
ここを理解しないまま加入すると、本来もらえた金額を取りこぼします。

正直に言うと、私が加入した2007年当時、この4区分をきちんと理解していませんでした。
結果的に有利な区分に該当したのは、狙ったからではなく廃業という事情がそうだっただけです。
これから加入する方は、最初に押さえておいてください。

共済金A(廃業・死亡)|もっとも有利な区分

個人事業を廃止した場合、または加入者が亡くなった場合に支給されます。
掛金納付月数6か月以上で受給でき、支給率による減額はありません。

中小機構が公開している例(掛金月額1万円の場合)を見てみます。

納付期間 掛金合計 共済金A 掛金合計との差
5年(60か月) 600,000円 621,400円 +21,400円
10年(120か月) 1,200,000円 1,290,600円 +90,600円
15年(180か月) 1,800,000円 2,011,000円 +211,000円
20年(240か月) 2,400,000円 2,786,400円 +386,400円

5年という短期でも掛金合計を上回っています
そして納付期間が長くなるほど、上乗せ幅が加速して大きくなるのが分かります。

税務上も退職所得として扱われ、一括受取なら退職所得控除を差し引いた残りの半分にしか課税されません。
金額の面でも税金の面でも、4区分のなかで最も有利な出口です。

共済金B(65歳+180か月の老齢給付)

個人事業主の場合、65歳以上で掛金納付月数180か月(15年)以上になると、廃業しなくても老齢給付として共済金Bを受け取れます。
事業を続けながら受け取れるのが、この区分の特徴です。

金額は共済金Aよりやや低い水準ですが、こちらも掛金合計を上回る設計になっています。
税務上も退職所得扱いです。

逆に言えば、180か月に届かないと老齢給付は使えません
50代で加入する場合は、15年後に自分が何歳になっているかを逆算しておく必要があります。

私がいま再加入するとすれば、180か月を満たすのは70歳前後です。
ただし老齢給付に届かなくても、廃業時の共済金Aなら6か月以上で受け取れて掛金合計を下回りません。
「180か月に届かないから意味がない」わけではない、というのが重要な点です。

準共済金(法人成り・事業譲渡)

個人事業を法人化して会社の役員になった場合や、配偶者・子へ事業を譲渡した場合が該当します。
掛金納付月数12か月以上で受給でき、金額は共済金A・Bより低いものの解約手当金より有利です。
税務上は退職所得として扱われます。

法人成りを検討している方は、ここで一度受け取るのか、それとも法人の役員として契約を継続するのか(従業員数の要件を満たせば継続可能です)という選択が生じます。
法人化の前に必ず確認しておくべき論点です。

解約手当金(任意解約)|元本割れはここだけ

事業を続けたまま、自分の判断で解約する場合がこれです。

掛金納付月数に応じた支給率(小規模企業共済法施行令の別表)が適用されます。
12か月未満は掛け捨てで、1円も戻りません。
12か月以上で80%からスタートし、240か月(20年)でようやく100%に到達。
それ以降は長期加入で最大120%まで伸びます。

つまり20年未満の任意解約は掛金合計を下回るということです。

さらに税務上の扱いも不利になります。
65歳未満の任意解約による解約手当金は「一時所得」となり、退職所得(1/2課税・分離課税)に比べて税負担が重くなります。
65歳以上での任意解約は退職所得扱いになるため、同じ解約でも年齢で結果が変わる仕組みです。

区分 受給の事情 必要な納付月数 支給率の減額 税区分(一括)
共済金A 廃業・死亡 6か月以上 なし 退職所得
共済金B 65歳以上の老齢給付 180か月以上 なし 退職所得
準共済金 法人成り・事業譲渡 12か月以上 なし 退職所得
解約手当金 任意解約 12か月以上 あり 一時所得
(65歳以上は退職所得)

「20年未満は元本割れ」はどこまで本当か

エブリイ前面

ここが、この記事で最も伝えたい部分です。

小規模企業共済を検索すると、ほぼ必ず「20年未満は元本割れ」という警告が出てきます。
これは間違いではありませんが、条件を書いていないと誤解を生みます

元本割れが起きるのは任意解約だけ

もう一度整理します。
納付月数に応じた支給率で減額されるのは、4区分のうち解約手当金(任意解約)だけです。

廃業による共済金A、老齢給付の共済金B、法人成りの準共済金には、支給率の減額そのものが存在しません。
だから短期でも掛金合計を下回りません。

つまり「20年未満は元本割れ」という表現は、正確には「事業を続けながら自分の意思で解約すると、20年未満は元本割れ」です。
この一文が省略されているために、加入を見送る人がかなりいるのではないかと感じています。

私が16年9か月でも損しなかった理由

私の納付月数は201か月。
240か月には39か月足りません。

もしあのとき店を続けながら任意解約していたら、支給率が適用されて掛金合計を下回っていました。
しかし実際にはフランチャイズ契約の終了に伴う事業廃止だったため、共済金Aに該当しました。

ケンの体験談

ここは、いま振り返ると本当に紙一重だったと思っています。

20年目に「大家が再契約しないと言っている」と告げられて強制退去になったとき、私に選択の余地はありませんでした。
店は閉めるしかない。
つまり廃業という事情を自分で選んだわけではないのです。

もし逆のパターンだったらどうだったか。
たとえば売上が落ちて資金繰りが苦しくなり、「店は続けたいけれど掛金14万円が払えない」となって解約していた場合。
この場合は任意解約なので、支給率で減額されたうえに一時所得としての課税を受けていました。

正直に言うと、当時の私は共済の掛金を「重い固定費」として見ていた時期があります。
あそこで解約に走らなかったのは、たまたま運が良かった面もあります。

だから声を大きくして書いておきたいのは、資金繰りが苦しくなったときの正解は解約ではなく減額だということです。
月1,000円まで下げれば負担はほぼ消えて、納付月数は積み上がり続けます。
ここを知っているかどうかで、最後に受け取る金額が大きく変わります。

増額分は240か月を別カウントという落とし穴

第2部でも触れましたが、任意解約を検討する人にとって重要なのでもう一度書きます。

掛金を増額した場合、240か月のカウントは増額した部分ごとに別々に積み上がります
私のように後半で何度も増額していると、増額分の納付月数は短くなります。

したがって「加入から20年経ったから任意解約しても100%戻る」と考えるのは危険です。
実際には、後から増額した部分だけ支給率が低く計算されます。

正確な金額は中小機構に照会すれば確認できます。
任意解約を検討する段階では、必ず事前に見込額を問い合わせてください

出口を決める順序

ここまでを踏まえると、資金が必要になったときの対応には明確な順序があります。

順序 対応 失うもの
1 掛金の減額(月1,000円まで) なし(納付月数は継続)
2 契約者貸付を利用(年1.5%〜) 利息のみ
3 掛止め(限定的な事情のみ) 納付月数と所得控除
4 任意解約 支給率による減額+税制上の優遇

解約は最後の手段です。
そして順序の2番目にある貸付制度が、実はこの制度の隠れた本体だと私は思っています。


貸付制度|掛けたお金は凍結されない

貸付制度

小規模企業共済には、納めた掛金の範囲内で借入れができる契約者貸付制度があります。
節税の話ばかりが語られる制度ですが、事業者にとっての実用性はここに集約されています。

年1.5%・担保保証人不要の一般貸付

中心となるのが一般貸付です。
掛金の納付状況に応じた掛金納付額の7割から9割の範囲で、10万円から2,000万円まで借入れできます。

利率は年1.5%
そして担保・保証人が不要です。
事業資金として使えるほか、審査も金融機関の事業融資に比べてはるかに簡便です。

つまり掛金は、積んだら手が届かなくなる資金ではありません。
いざというときに年1.5%で引き出せる待機資金でもあるということです。

廃業準備貸付まで用意されている

一般貸付以外にも、目的別の特別貸付が複数あります。

貸付の種類 主な用途
一般貸付 事業資金全般(10万円〜2,000万円)
緊急経営安定貸付 売上減少などで資金繰りが困難なとき
傷病災害時貸付 病気・けが・災害による資金需要
福祉対応貸付 本人や家族の福祉向上に必要な資金
事業承継貸付 事業を承継するための資金
廃業準備貸付 廃業に伴う設備の処分費用など

特別貸付の利率は種類によって異なり、年0.9%といった低い水準で設定されているものもあります。

注目してほしいのは、廃業準備貸付があることです。
入口から出口まで面倒を見る設計になっているのは、民間の金融商品にはあまりない性格だと思います。

解約する前に必ず検討すべき順序

軽貨物の場合、資金が必要になる場面は具体的です。
車両の故障、事故、タイヤ交換、車検、そして繁忙期の反動で稼働が落ちる時期です。

私の場合もタイヤ4本+工賃で29,000円、パンクは2回経験しています。
これくらいなら手元資金で対応できますが、エンジンや大きな修理になると金額が跳ね上がります。

そういうときに、カードローンや消費者金融に手を出す前に共済の貸付を思い出せるかどうか。
年1.5%と年15%前後では、返済負担がまったく違います

注意:貸付には利息が発生し、期限までに返済しないと延滞利子(年14.6%)がかかります。
また借入残高がある状態で共済金を受け取る場合、残高が差し引かれます。
借入枠があるからといって安易に使うべきものではありません。


iDeCo・経営セーフティ共済との使い分け

iDeCo・経営セーフティ共済

個人事業主が使える制度は、小規模企業共済だけではありません。
ここでは併用を検討すべき2つの制度と比較します。

2027年1月からiDeCoは月7.5万円へ

小規模企業共済とiDeCo(個人型確定拠出年金)は併用できます
どちらも掛金が全額所得控除の対象なので、両方を上限まで使えば控除額はかなり大きくなります。

個人事業主(国民年金第1号被保険者)のiDeCo拠出限度額は現在月6.8万円(国民年金基金・付加保険料との合算枠)です。
これが制度改正により、2027年1月から月7.5万円に引き上げられます

小規模企業共済の月7万円と合わせれば、月14.5万円・年174万円という控除枠になる計算です。

項目 小規模企業共済 iDeCo
掛金上限 月7万円(年84万円) 月6.8万円
→2027年1月から月7.5万円
所得控除 全額 全額(同じ控除欄)
運用 中小機構が運用
(予定利率1.0%+付加共済金)
自分で商品を選択
(元本変動あり)
受取開始 廃業時など
65歳以上+180か月で老齢給付
原則60歳以降
途中の引き出し 任意解約可
(20年未満は元本割れ)
原則不可
借入れ 契約者貸付あり(年1.5%〜) なし
国保料への影響 下がらない 下がらない

流動性で共済を優先する理由

優先順位をつけるなら、私は小規模企業共済からだと考えています

理由は流動性です。
iDeCoは60歳まで一切引き出せません。
一方、小規模企業共済には年1.5%の貸付制度があり、最悪の場合は解約という選択肢も残ります。

軽貨物はキャッシュフローが不安定になりやすい仕事です。
車両トラブルで稼働が止まれば、その分の売上はそのまま消えます。
手が届かない場所に資金を固定しすぎるのは危険だと、私は考えています。

ただしこれは私の判断で、推奨ではありません。
運用でリターンを狙いたい方の考え方はまた別です。
投資判断はご自身の状況に応じて、金融機関や専門家にご相談ください。

2026年1月からの退職所得控除「10年ルール」

これは併用する人が必ず押さえるべき改正です。

退職所得控除には、複数の退職金や一時金を近い時期に受け取ると控除の重複を排除する調整ルールがあります。

2026年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取り、その後に退職金(小規模企業共済の共済金を含む)を受け取る場合、重複期間の判定期間が従来の5年から10年に延長されました。

従来は「iDeCoを先に受け取り、5年空けてから退職金」という受け取り方で控除を二重に活用できました。
この間隔が10年必要になったということです。

なお先に共済金を受け取り、その後にiDeCoを受け取る場合の判定期間は従来どおりです。
つまり受け取る順番の設計が、これまで以上に重要になりました。

注意:受取順序と時期の最適化は、他の退職金の有無や年齢によって答えが変わります。
この論点は税理士に個別相談する価値が最も高い部分です。
自己判断で受取時期を決めないことをおすすめします。

経営セーフティ共済は国保料に効くが出口が不利

中小機構が運営するもうひとつの制度が経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。
名前が似ているので混同されますが、性格はまったく違います。

項目 小規模企業共済 経営セーフティ共済
目的 経営者自身の退職金づくり 取引先倒産時の連鎖倒産防止
掛金 月1,000円〜7万円 月5,000円〜20万円
積立上限 月額上限のみ 800万円
税務上の扱い 所得控除 必要経費
国民健康保険料 下がらない 下がる
解約時の課税 退職所得(1/2課税)など 全額が事業所得
元本割れ 任意解約240か月未満 40か月未満

決定的な違いは掛金の税務上の位置づけです。
小規模企業共済は所得控除なので国保料には効きませんが、経営セーフティ共済は必要経費に算入できるため事業所得そのものが減り、国保料も下がります

ただし落とし穴があります。
解約時の受取額は全額が事業所得として課税されるため、単なる課税の繰り延べにすぎません。
退職所得として1/2課税で受け取れる小規模企業共済とは、出口の有利さが決定的に違います。

さらに40か月未満の解約は元本割れし、解約後2年間は再加入しても掛金を必要経費に算入できないという制限もあります。

順序としては、まず小規模企業共済で退職金を確保し、余力があれば経営セーフティ共済で国保料込みの節税を狙うという組み立てが合理的だと考えています。


デメリットと加入前に知っておくべき注意点

デメリットと加入前に知っておくべき注意点

ここまで良い面を中心に書いてきましたが、弱点もあります。
メリットだけを並べても判断材料にならないので、正直に書きます。

インフレに弱い

基本共済金の予定利率は年1.0%です。
付加共済金が上乗せされるとはいえ、物価上昇率がこれを上回る局面では、実質的な購買力が目減りします。

私が16年掛けていた期間は、日本の物価がほとんど動かない時期でした。
しかし今後も同じとは限りません。
長期の物価上昇に備えるという観点だけで見れば、この制度は決して強い商品ではありません。

だからこそ、私は共済だけに寄せない形にしています。
軽貨物で得た事業所得の一部は新NISA(つみたて投資枠)でS&P500に積み立てています。
守りの共済と、値動きのある運用を分けて持つ考え方です。

ただしこれは私の選択で、推奨ではありません。
投資は元本が保証されず、判断はご自身の状況に応じて行ってください。

加入資格を失うリスク

事業を法人化して従業員が増えた場合など、加入資格を満たさなくなると契約を続けられないことがあります。

特に注意したいのが業種別の従業員数要件です。
飲食や小売のようなサービス業は5人以下という厳しい枠なので、事業拡大の途中で資格を失う可能性があります。
運輸業は20人以下なので、軽貨物ドライバーが単独で走っている限り心配はほぼありません。

差押禁止には例外がある

共済金の受給権は小規模企業共済法第15条により、譲渡・担保提供・差押えが禁止されています。
破産手続や民事再生手続でも保護されます。

ただし国税・地方税の滞納処分などには例外規定があります
「どんな場合でも絶対に守られる資産」と書いている記事も見かけますが、それは正確ではありません。

受取時期を自分で選べない

これは実際に受け取ってみて感じた点です。

共済金Aは廃業という事実が要件になるため、「税率が低い年に受け取る」といった調整は基本的にできません
私の場合も、契約終了という向こう都合のタイミングで一括受取が確定しました。

退職所得は分離課税なので他の所得と合算されませんが、同じ年に他の退職金がある場合などは影響を受けます。
出口が近づいたら、必ず税理士に相談してください。


加入手続きの流れ|オンラインと窓口

加入手続き

加入方法はオンライン窓口の2通りです。

マイナンバーカードがあればオンラインで完結

中小機構の「小規模企業共済オンライン手続きポータル」から申し込めます。
マイナンバーカードによる本人確認が必要で、対応スマートフォン、またはICカードリーダーを接続したパソコンから手続きできます。

書類の郵送が不要なので、条件が合うならこちらが早いです。
加入後の掛金の増額・減額も同じポータルから申請できます。

窓口を使うべきケース

商工会・商工会議所、青色申告会、金融機関(銀行・信用金庫・農協など)といった委託団体でも手続きできます。

共同経営者としての加入や、加入資格の判定が微妙なケースは、窓口で相談しながら進めたほうが確実です。
私が妻を加入させたときも、書類の要件を口頭で確認しながら進めました。
一度で通らないと余計な時間がかかるので、迷ったら相談するほうが早いと思います。

必要書類

立場 必要な書類
個人事業主 確定申告書の控え
(開業直後で未申告なら開業届の控え)
共同経営者 上記+共同経営契約書などの写し
+報酬の支払いが確認できる書類
共通 契約申込書、預金口座振替申出書

加入後は毎年11月頃に掛金払込証明書が郵送されます。
確定申告で所得控除を受けるための書類なので、必ず保管してください。


よくある質問(FAQ)

よくある質問

Q1. 廃業したら必ず共済金Aになりますか?

A. 個人事業を廃止した場合は共済金Aに該当し、掛金納付月数6か月以上で受給できます。
ただし「廃業」と認められるかは実態で判断されるため、事業を一部継続している場合などは判定が変わる可能性があります。
廃業届の提出など事実関係を整えたうえで、中小機構に確認してください。
手続きの流れは軽貨物の廃業手続き完全ガイドにまとめています。

Q2. 20年続けられそうにないのですが、入るべきでしょうか?

A. 「20年未満は元本割れ」は任意解約の場合の話です。
廃業や死亡による共済金Aには支給率の減額がなく、5年程度でも掛金合計を上回ります。
20年を絶対条件と考える必要はありませんが、途中で任意解約する可能性が高いなら、無理のない掛金額から始めるのが安全です。

Q3. 会社員をしながら副業で軽貨物をしています。加入できますか?

A. 常時雇用されている給与所得者は、原則として加入できません。
その個人事業が主たる事業といえるかが判断のポイントになります。
会社を退職して専業になったタイミングが加入のスタートラインです。
副業として軽貨物を始める段階の方は、軽貨物の副業ガイドを先に読んでください。

Q4. 配偶者を加入させるにはどうすればいいですか?

A. 共同経営者としての加入を検討してください。
事業の経営に実質的に関与し、事業の執行に対して報酬を受けていることが要件です。
青色事業専従者給与を受け取っている配偶者は報酬要件を満たすケースが多いですが、共同経営契約書などの書類整備が必要になります。
個人事業主1人につき2人まで加入できます。

Q5. 掛金が払えなくなったらどうすればいいですか?

A. まず減額を検討してください。
理由を問わず月1,000円まで下げられ、減額しても納付月数は積み上がり続けます。
掛止めは災害や入院など限定的なケースでしか認められず、その期間は納付月数にカウントされません。
解約は最後の手段と考えてください。

Q6. iDeCoと両方入れますか?

A. 併用できます。
どちらも掛金が全額所得控除の対象です。
ただし2026年1月以後、iDeCoの一時金を先に受け取ってから退職金や共済金を受け取る場合の重複期間の判定が5年から10年に延長されたため、受取順序の設計には注意が必要です。
税理士への確認をおすすめします。

Q7. 掛金を払うと国民健康保険料も下がりますか?

A. 下がりません。
国保料の所得割は「旧ただし書き所得」で算定され、小規模企業共済等掛金控除のような所得控除は構造上含まれないためです。
自治体による違いではなく、制度としてそうなっています。
国保料を下げたい場合の対策は軽貨物ドライバーの国民健康保険が高い理由と5つの対策を参照してください。


まとめ|共済金は「次の柱」を育てる原資になる

共済金は「次の柱」を育てる原資

小規模企業共済は、個人事業主が最初に検討すべき制度だと私は考えています。
掛けている間は所得控除が効き、出口では退職所得として税負担が軽く、途中では年1.5%で借りられる。
これだけの機能を持つ制度は、他に見当たりません。

本記事の3つの結論

  1. 「20年未満は元本割れ」は任意解約だけの話。廃業や死亡による共済金Aには支給率の減額がなく、5年でも掛金合計を上回る。私は201か月・16年9か月で廃業したが、掛金合計を超えて受け取れた。
  2. 掛金は低額から始めて増やす。減額はいつでもできるが任意解約は損をする。資金繰りが苦しいときの正解は解約ではなく減額と貸付制度。月1,000円まで下げても納付月数は積み上がる。
  3. 配偶者と事業を営むなら共同経営者枠を使う。掛金の控除枠が年84万円から168万円になり、受取時の退職所得控除も2人分使える。同じ2,000万円を受け取る場合、契約が1本か2本かで税負担は100万円以上変わる。

私がもう一度加入するかどうか

いま軽貨物をしている私は、再加入が可能な立場です。
ただし50代半ばからの加入となると、老齢給付の要件である180か月を満たすのは70歳前後になります。

それでも私は前向きに考えています。
理由は3つです。
短期でも廃業時の共済金Aなら掛金合計を下回らないこと。
所得控除が毎年確実に効くこと。
そして、年1.5%で借りられる待機資金としての機能があることです。

逆に、加入を急ぐべきでない場面もあります。
開業直後で売上が安定していない時期、任意保険料や車両費といった固定費の実額をまだ把握していない時期です。
月1,000円から始められる制度なので、「入るか入らないか」ではなく「いくらから始めるか」で考えるのが現実的だと思います。

共済金があったから、次の柱を作れた

最後に、この記事で一番書きたかったことを書きます。

20年やった店が契約書一枚で終わったとき、私の収入は一夜でゼロになりました。
売上はずっとあったのに、店を失った瞬間に何も残らない。
それがひとつの収入源に全部を賭けることのリスクです。

そのとき手元にあった共済金で、私は北海道から近畿圏へ移住し、軽貨物で再スタートを切りました。
そして今は、軽貨物で生活費を確保しながらブログとYouTubeを育て、その一部を新NISAに回しています。
軽貨物80%・ネットビジネス15%・株式投資5%という現在の比率を、3〜5年で50%・40%・10%に変えていくのが目標です。

小規模企業共済は、節税商品としてだけ見ると年20万円台の話で終わります。
しかし事業が終わったときに次の柱を立てる原資として見ると、意味がまったく変わります。
私にとっては、これがなければ再起の初期費用すら出せませんでした。

収入の柱を複数持つというのは、稼ぎ方を増やすことだけではありません。
ひとつの柱が倒れたときに、次を立て直せる資金を持っておくことも含まれます。
その意味で、この制度は「走れなくなった後」への備えそのものです。

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出典・参考

本記事の制度内容は、以下の一次情報をもとに作成しています(2026年9月時点で確認)。

中小企業基盤整備機構「小規模企業共済」
https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/

中小機構「加入資格」
https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/entry/index.html

中小機構「共済金・解約手当金について」
https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/claim/

中小機構「貸付制度」
https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/loan/index_02.html

中小機構「小規模企業共済事業の現況」
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/status/index.html

中小機構「小規模企業共済 よくあるご質問」
https://kyosai-faq.smrj.go.jp/skyosai/

国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm

国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm

  • この記事を書いた人

ケン

50代・関西在住の現役軽貨物ドライバー。 北海道で20年間フランチャイズで飲食店を経営するも、契約終了により強制退去を経験。 「ひとつの収入源にすべてを賭けるリスク」を痛感し、現在は軽貨物・ネットビジネス・株式投資の3本柱で生活設計を実践中。 別ジャンルのブログで月2万円のAdSense収益、新NISAでS&P500を積立運用しながら、軽貨物ノートで現役ドライバー目線の一次情報を発信しています。 ▶3本柱の全体像はnoteで公開→note記事を読む

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